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おもてなし大使活動報告

2012年2月9日

北見貴志大使からの報告です。

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おぼろ月夜の古都 魔法がかかったような あの時を忘れない。

広島県から、金婚式、古希を記念して、病気発症10年を迎えたご高齢のご夫婦が、
京都へ2泊3日でお越しくださいました。

お父様は、10年前、脳梗塞で倒れ、日常は、常時車椅子。
時折ベットで休む生活をしている。
デイサービスや訪問介護、リハビリの病院へ通う毎日。
ベットに手すりがあれば、起き上がることができるが、
車椅子への移乗と、トイレ移乗は奥様の手伝いが必要である。
膀胱がんを患い、トイレは30分から1時間おきに行く。
今は身の回りの世話は、奥様がしています。

人物(庭)

お父様にとって、人生最後の旅行になるかもしれない行先に
京都を選んで頂きました。
京都で長女様と合流し、初日は嵯峨野の宿に直行。
2日目は、金閣寺、龍安寺、錦小路、そして嵐山で湯豆腐料理を堪能したあと
辺りはすっかり夕闇に包まれ、嵯峨野の宿へ移動した。
そして、京都旅行の最終の夜を迎えることになった。

人物(カウンター)

古都のおぼろ月夜は、父の最終日の京都を惜しんでいるようでした。
2階のバリアフリーツインの部屋に戻り、
奥様が、「明日帰るんじゃね。楽しかったね。」うなずく父娘。
この日の宿は他の宿泊者が見当たらない。
2階の廊下は静まり返っている。長女が「誰も泊まっていないのかしら?」

お母様は、しんと静まった宿で、長女が怖がらないか不安であろうと察知した。
お父様はトイレを済ませ、手すりがないベットで寝息を立てはじめた。

お母様は、隣の長女の部屋を訪れ、時を忘れ、たわいもない話に夢中になっていた。
夜も深まり、差し込むおぼろ月が隠れた、その時。

ドアを「トントン」ノックの音。「こんな夜更けに誰?」奥様の声が震えた。
「誰もいないはずなのに、お父さんはベットに手すりがないから起き上がれないし」
長女の声も震えた。
更に、「トントン、トントン」幾度とノックされる。
「確かに廊下に誰かいる」と長女。
長女は震えた腰を持ち上げ、硬直された手で、
ドアを、「ギギギー・・・」
ドアを5cm,10cmとゆっくり開けると、
人がいる気配。
そこには、お父様が笑顔で車椅子に乗っていた。
「おしっこ自分でしたよ」

その時、時が止まった。母娘が目を見合わせた。
魔法がかかったような2人。
「どどど、どうやってここまで来れたの?」と長女。
言葉を失う、母。微笑む、父。
「自分で来たよ」父の冷静な声は、静まり返った廊下に響く。
お父様の生きがいに満ち満ちた表情と言動は、人として生きる自信と勇気を、
全ての人に与えるだろう。

今までできなかった事ができた。トイレに行きたい。
話をしたいという欲求が隠れた能力を出したのかもしれない。
家ではありえないことが、京都で潜んでいる能力がでました。
お父様は無限の可能性を実感した。生き方見つけ、更に永遠の旅は続いていく。

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